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人知れず生きる乾物的なコケ植物たち

上の写真は浜松城公園近くの街路樹、現在開館中の大河ドラマ館と浜松市役所の間に生えるケヤキです。毎日、数百人の人々が浜松城公園を訪れていますが、この樹をじっくりと観察する人はほとんどいません。
ちょっと立ち留まって眺めてみると、幹はとてもカラフルなことに気が付きます。これらは、コケ植物や、昨年11月27日の観察会でご紹介した地衣類などの着生性の生き物たちの色合いです。

今回は、コケ植物(以下、コケ)に注目してみましょう。

コケは、根や維管束(水分や養分が通る太い管)、種子など植物にありがちな機能を持たない、陸上植物の中で最も原始的なグループです。水分を吸収する根が無い代わりに、葉や茎から、水分や水に溶けた栄養分を直接取り込みます。

「空気が乾燥したらコケは乾いて死んじゃうの?」

ご安心ください。湿度が低い時、コケは葉を縮めて自ら仮死状態になり、乾燥した期間をやり過ごします。そして、雨が降ると再び葉を広げるのです。この性質によって、種によっては湿った時と乾いた時とで見た目が劇的に変化します。

下の写真はハマキゴケが乾燥した状態(左)と潤った状態(右)。同じ種とは思えないほどの劇的ビフォーアフターですね!

2月4日に開催した観察会では、ルーペやスマホの拡大レンズを使って科学館敷地内に生えるコケを満喫しました。乾いた状態のコケを観察した後に、霧吹きで水をかけると、ものの数秒で展葉します。参加者から「動いてる!」と驚きの声が上がりました。

当館ウェブページでは、科学館敷地内で観察できる7種のコケを紹介するミニガイドブックを公開しています。
ミニガイドブックのダウンロードはこちらから↓

ダウンロード

左から、キャラボクゴケ、ギンゴケ、カラヤスデゴケ、ヒナノハイゴケ

さて、冒頭に登場したケヤキをミニガイドブックで種を同定すると、コケと地衣類の合計で8種が確認できました。

微小な種、顕微鏡でなければ同定が難しい種なども含めればより多くの種が記録されることでしょう。普段何気なく通り過ぎている街中の1本の樹の幹にも、「宇宙」が広がっているのですね。

ガイドブックを活用して、コケ、そして地衣類の世界への第一歩を踏み出してみてください。

より詳細な情報を科学館noteで公開しています。興味のある方は、ぜひご覧ください。

お散歩が楽しくなる!「苔ミニガイドブック」を公開
水を吸って大変身!?「苔の劇的ビフォーアフター」をタイムラプスで撮影してみた

イベント名:105歩で生き物観察【コケ編】
開催日:2023年2月4日(土)
イベント担当者:小粥隆弘(生き物博士)
参考資料
『知りたい 会いたい 特徴がよくわかる コケ図鑑』藤井久子著 (家の光協会, 2017)
『じっくり観察 特徴がわかる コケ図鑑』大石善隆著 (ナツメ社, 2019)
Wickett, N. J. et al. Phylotranscriptomic analysis of the origin and early diversification of land plants. Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A. 111, E4859–E4868 (2014).