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ツクシの胞子はクネクネ動く

今の時期に畑の脇や空き地に現れるツクシ。
分類学的にはシダ植物の仲間で、正式な種名を「スギナ」と言います。ツクシが出た後にわさっと生えてくる緑色の箒(ほうき)のようなものが、スギナの光合成をする部分(栄養茎)です。

スギナは胞子で子孫を残します。胞子とは、菌類やシダ植物が増殖する際に作る細胞で、一般的な植物の種子にあたる存在です。私たちは、スギナが胞子を作る部位(胞子茎)のことを「ツクシ」と呼んでいます。ツクシは、スギナの1つの器官にすぎないのですね。

ツクシを縦半分に割ると、帽子に見える部位(以下、帽子)に粉状の胞子がぎっしりと詰まっています。さらに胞子の1粒を拡大して観察すると、胞子から4本の糸が伸びているのが分かります。これは「弾糸(だんし)」と呼ばれる植物の胞子特有の構造です。風が帽子の亀裂を通り抜けた時に、その風を弾糸がつかまえて、胞子は外の世界へ旅立ちます。

弾糸には、湿度が低いと伸び、湿度が高いと小さくまとまる性質があります。この弾糸の伸縮の反応はとても素早く、弾糸が伸びた状態の胞子へ息を吹きかけると、その水分に反応して瞬時に縮まります。まるで胞子がクネクネと踊っているようです。

雨の日は、胞子の弾糸は小さくまとまり、帽子の中で静かにしています。太陽が出て湿度が下がると、胞子は弾糸をめいっぱい広げて風をつかみ、外界へ飛んでいきます。弾糸の性質によって、ツクシは晴れの日を選んで胞子をより遠くへ飛ばし、広範囲に子孫を残すことができるのです。

科学館では15分で自然観察「ツクシの胞子はクネクネ動く」と題して、ツクシの胞子を生物顕微鏡で観察するイベントを開催しました。

ツクシの胞子を顕微鏡にセットして、胞子の様子を顕微鏡で観察しながら、お湯が入ったビーカーを近づけます。すると、胞子の弾糸はお湯の水蒸気に反応してクルリと丸まり、乾くと再び伸びました。参加者の皆さんは反応する過程で胞子がクネクネと動く様子に驚きの声を上げていました。

道端に何気なく生えているツクシ。
植物は芽を出したらその場から動くことができず、環境の変化を一身に受けて、耐え続けるイメージがあります。しかし実際は、自身の都合の良いタイミングで胞子を分散するように、創意工夫しながら困難な状況を受け流していました。

植物は私たちが想像するよりも自由なのかもしれません。

ツクシの胞子やタンポポの種子の分散をテーマにしたより詳細な情報を科学館noteで公開しています。興味のある方は是非ご覧ください。

”ハレの日”は”晴れの日”に。意外と自由度が高いツクシとタンポポの話。(note)

イベント名:15分で自然観察 ツクシの胞子はクネクネ動く
開催日:2022年3月27日(日)
イベント担当者:小粥隆弘(生き物博士)