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煮干しから学ぶ 生き物のからだ

魚、カエル、ヘビやトカゲ、鳥、サル、そして私たち(ヒト)は、首から背中へつながる「背骨」をもつ動物の仲間で「セキツイ動物」といいます。
下の図をごらんください。

  • ①魚
  • ②カエル
  • ③トカゲ
  • ④鳥
  • ⑤サル

これらセキツイ動物は、①魚類、②両生類、③ハチュウ類、④鳥類、⑤ほ乳類の5つのグループに分けられ、姿かたち、生態は全然違います。しかし、そのからだの中はとても多くの共通点をもっています。そこで、外側から見ただけでは分からないその共通点を、食材である「煮干し」を解剖することで探してみたいと思います。

煮干しといえば、料理のだしに使われる身近な食材です。煮干しは、小魚を煮て干したもので、カタクチイワシで作ったものが一般的です。ある程度乾燥しているため、取り扱いも簡単で、からだの中を観察するのに適しています。煮干しの解剖に向いているのは、形のいい大きめの煮干し。7~10㎝くらいあると、内臓やからだのつくりが分かりやすいです。からだがねじれていたり、頭が欠けているものもありますので、形のよいものを選びましょう。

手ごろな煮干しを選んだら、まず頭から尾まで全体の姿を観察します。ひれはどこにあるかな。目玉の色は何色かな。よく観察すると、煮干しの口の大きさにびっくりしたり、ぴかぴか光るうろこを見つけたりするかもしれません。
全体の姿をしっかり観察したら、ピンセットや、つまようじを使って、解剖してみましょう。
白い紙の上で解剖すると、観察しやすいですよ。

最初に、えらの部分を大きく動かして、頭部と胴体に分けます。

次に、頭部を上から見下ろすように持ち、つめで頭部を半分に開きます。

今回は頭部を中心に見ていきましょう。
頭部から取り出したものは、目、耳石、脳、えら、鰓耙(さいは)。
それぞれの器官の位置は、下の写真のとおりです。

頭部には多くの感覚器官が集まっています。
まず、目を見てみましょう。
煮干しの目の白色の部分は水晶体といって、私たちの目にもあります。水晶体は、カタクチイワシが生きているときには透明ですが、たんぱく質でできているため、加熱された段階で白くなってしまいます。魚の水晶体は下の図のように、水の中に適応したボールのような丸いかたちをしています。そして、水晶体を前後に動かしてピントを合わせています。一方私たちヒトの水晶体は凸レンズのような形をしていて厚くしたり、薄くしたりしてピントを合わせています。

目を取り出した時に、一緒に黒いものがついてきます。これは網膜といいます。カメラに例えると、網膜はレンズ(水晶体)で集めた光を映すフィルムのようなものです。

脳は、頭蓋骨の中におさまっている黄色い固まりです。
魚の脳はとても小さいですね。小さいけれど、脳のはたらきは魚類もヒトも同じで、からだ全体に指令を出す器官です。水中でえさを探したり、まわりを警戒しながら泳いだり。脳にはたくさんの神経がつながっていて情報のやり取りをしています。

脳の後ろの辺りにあるのが耳石です。
ヒトの耳石は、耳の奥の三半規管と呼ばれる器官の中にあります。
耳石は平衡石ともいい、からだの平衡感覚の調整に関係する大切な組織です。からだの傾きを知る働きをしています。煮干しの耳石は、白くてうすいゴマ粒状で、頭蓋骨に埋もれてしまうくらい小さいため、見つけるのは少し難しいかもしれません。

また、魚の耳石には人間の耳石にはない面白い特徴があります。一日に1本とても細い輪が刻まれて、樹木の年輪と同じような輪紋ができるそうです。耳石の成長とともに大きくなるため、魚の年齢を知る手がかりになります。

上の写真は、取り出した耳石の断面を顕微鏡(50倍)で撮影したものです。輪紋は見えるでしょうか…。さらに拡大してみましょう。浜松科学館の「でんけんラボ」にある電子顕微鏡で撮影しました。
左側が耳石の表面部分で、中央から右側の部分が断面を拡大したものです。
楕円状の輪が連なり、層になっている輪紋が見えました。

次に「えら」と「鰓耙(さいは)」を取り出します。
えらは頭部の左右に一つずつあり、えらを保護する「えらぶた」に覆われています。
私たちヒトは肺呼吸をしているため、えらはありません。

えらは、水中にとけている酸素を取り込む器官で、魚類のえら呼吸のしくみは、とても合理的です。

上の写真を見ていただくと、くしの歯のようなものが並んでいるように見えます。1本1本のくしの歯の表面近くには、毛細血管がびっしりと張りめぐらされています。魚は海水中のわずかな酸素を取り込むために、えらをくし状にすることで、水との接触面積を増やし、酸素を取り入れやすくしているのです。そして、えらの内側にある白いすじ状のものが、鰓耙(さいは)です。鰓耙(さいは)は魚類特有の器官で、エサとなるプランクトンを水と一緒に取り込み、えらから水が出ていくときにプランクトンだけ濾(こ)しとる働きをします。イワシやアジなど、主にプランクトンを食べる魚は鰓耙(さいは)が発達しているようです。

今回は詳しく取り上げませんが、胴体からは心臓、肝臓、腸、卵巣や精巣を取り出しました。
下の写真のように、2枚に割くようなイメージで、胴体を半分に分けます。

内臓は背骨がついている半身の方に残ります。

ぜひ、みなさんも胴体の解剖に挑戦してみてください。
今回行った「じっくり観察 煮干しのからだ」のイベントでは、煮干しを解剖しながら、
「耳石見つけた!」
「これって卵ですか?」
など、質問や驚きの声が、たくさん聞こえてきました。

みなさん、小さな魚のからだの中に、私たちと似たところがたくさんあったことを発見できたでしょうか。

イベント名:15分で自然観察「じっくり観察 煮干しのからだ」
開催日:2021年9月12日(日)
イベント担当者:大堂三和子
参考資料:『煮干しの解剖教室』小林眞理子著(仮説社)
『学研の図鑑 魚』沖山宗雄(学研プラス)
「えらのしくみは、どうなっているの」(なぜなに学習相談)学研教育情報
資料センターhttps://kids.gakken.co.jp/box/rika/06/tan02.html
『新版 理科の世界2』 有馬朗人著ほか(大日本図書株式会社)