秋の気配を感じる季節になりました。
9月の星空案内をお届けします。
9月の星空案内:お月見を楽しんで
2022年9月 上旬:22時ごろ 中旬:21時ごろ 下旬:20時ごろ
惑星の位置は中旬ごろを目安にしています
日の入りが18時頃となり、6月の夏至から1時間近く夜の訪れが早くなりました。
頭上高く、夏の大三角の星がきらめき、東の空には秋の四辺形も昇ってきます。
そして何といっても9月はお月見の季節です。月は、夏になると空の低いところに昇り、冬には空の高いところに昇ります。この時期は丁度良い高さに月が昇り、空気も澄んで涼しいことから、月を見るのに適しています。
今月の星座:やぎ座
やぎ座は、上半身がヤギ、下半身が魚の姿をしています。
ギリシャ神話では、牧神パンが変身に失敗した姿だと伝えられています。パンは上半身が人間、下半身がヤギの姿をしており、もともとヤギの姿に似た神様でした。ある日、神様たちが集う宴会に参加していたところ、怪物テュフォンに襲われます。神々は様々な動物に変身して一斉に逃げ出しました。パンは、得意のヤギに変身して逃げようと、駆け出し、川に飛び込みました。すると、あまりに慌てていたため、水に浸かった下半身は魚の姿になってしまったのです。神様の間でその姿がとても面白いと話題になり、星座となりました。
(文:浜松科学館 天文チーム)
富士に帰ったかぐや姫
9月は中秋の名月があります。生活の中で月を意識することが多くなる時期かもしれません。さて、月にまつわる昔話に「かぐや姫(竹取物語)」があります。かぐや姫にゆかりのある地域は全国各地にありますが、富士山南麓の富士市や富士宮市にも、かぐや姫の物語が伝えられています。今回は富士山を信仰する寺社が記した書物「富士山縁起」のかぐや姫物語をご紹介します。
昔、駿河の国に住む老夫婦は竹林の竹の中に小さな女の子の赤ちゃんを見つけました。二人は大切に育て、やがて美しい姫に成長しました。その身体からは神々しい光がはなたれ、夜も周囲を明るく照らすほどでした。そこから「赫夜姫(かぐやひめ)」と呼ばれるようになりました。
時の天皇である桓武天皇は后となる女性を探すために、全国に使いを向かわせます。使いは偶然立ち寄った老夫婦の家でかぐや姫と出会い、あまりの美しさにたいへん驚きました。そして「あなたこそ后にふさわしい、私はこれから天皇に伝えてきます。」と言って都へ戻って行きました。
かぐや姫は老夫婦に言いました。「私は后になることを望んではいません。世の中と隔絶して、富士山の洞窟に入ろうと思います。」当時富士山は神仏が住む山とされ、人々が立ち入ることはおそれ多いことでした。そこへかぐや姫が行こうと言うのですからその噂はたちまち国中に伝わりました。
別れの時―。人々が集まり、皆富士山に足を踏み入れ姫を追いかけます。中宮(ちゅうぐう)※1まで登ってきたところで、かぐや姫は別れを告げます。そして富士山頂に着いたかぐや姫は釈迦岳※2の洞窟へと入っていったのでした。実はかぐや姫は富士山の神様だったのです。そもそもかぐや姫は富士山のご神体であり、世の中の人々を救うために浅間大菩薩(せんげんだいぼさつ)となって姿を現したというのです。
かぐや姫は月ではなく富士山に帰るというのが地域性を感じますね。ぜひ月と富士山を同時に見て、かぐや姫のご利益を感じてみませんか。
※1 かぐや姫と人々が別れた場所。富士山五合目付近。
※2 白山岳の旧称。富士山頂の峰の一つ。
参考資料:
富士山かぐや姫ミュージアム museum.city.fuji.shizuoka.jp/princess-kaguya