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冬が旬!擬態昆虫を探してみよう

冬の自然観察園は、活動する生き物が減って少し静かです。
私たち哺乳類は体温調節が可能ですので、体温を保ち、体を動かすことができます。
しかし他の動物たち、特に昆虫は体温調節ができないため、寒い冬は身動きがとれません。

動けないことの欠点の一つとして、捕食者から逃げられないことが挙げられます。
捕食者に食べられないように、昆虫たちはどのような対策をしているのでしょうか?

昆虫たちの秘策、それは「擬態」です。

擬態とは、「ある生き物が何かに似せて、それを見つけるものをだますこと」。
具体的には、「蛾」が「枯葉」に似せて、捕食者である「鳥」をだますという一連の流れです。

1~2月に浜松科学館(自然観察園)と北杜市オオムラサキセンターの2カ所を舞台に擬態昆虫を観察するイベントを開催しました。

残念ながら浜松科学館では今年の擬態昆虫は少なかったようで観察することはできませんでしたので、以下に北杜市オオムラサキセンターで観察できた昆虫4種を紹介します。

◆オオムラサキの幼虫

上位分類学名:チョウ目タテハチョウ科
分布:北海道、本州、四国、九州
体長(冬季の幼虫):20 mm程度
国蝶に指定される日本を代表する蝶です。成虫はコナラやクヌギの樹液を舐め、幼虫はエノキという落葉樹の葉を食べます。冬季はエノキの根元の落ち葉に身を隠します。

秋・冬の期間は落ち葉と同じ茶色、生きた葉を食べる春・夏の期間は緑色というように、季節によって周囲の環境に合わせて体色を変化させます。

◆コミミズクの幼虫

上位分類学名:カメムシ目ヨコバイ科
分布:本州、四国、九州
体長(冬季の幼虫):11 mm程度
コナラ、クヌギ、スダジイ、アラカシなどの枝に張り付いて越冬します。擬態する昆虫の中でも、見つける難易度は最高クラス。どこにいるか分かりますか?

正解はこちら(上の写真の白色線内)。体を下向きにして、下から頭部、胸部、腹部があります。よく見ると脚が体にピタリとフィットして、枝の滑らかな面を見事に再現しています。

◆カシアシナガゾウムシ

上位分類学名:コウチュウ目ゾウムシ科
分布:本州、四国、九州
体長:6 mm程度
長い口(口吻)はゾウムシの仲間の特徴。長い前脚、中脚を使ってコナラの枝にしっかりとしがみついていました。遠くから観察すると、樹の冬芽や瘤(こぶ)に見えます。冬の期間は健気にこの体勢のままで過ごします。

◆コマダラウスバカゲロウの幼虫

上位分類学名:アミメカゲロウ目ウスバカゲロウ科
分布:本州、四国、九州
体長(幼虫):最大で10 mm程度
ウスバカゲロウの仲間の幼虫は、いわゆる「アリジゴク」です。一般的には砂にすり鉢状の巣を作り、そこに落ちた小さな生き物を捕らえて食べるイメージがあります。しかし実際は、ただ土の中に留まったり、地面を歩行したりと、すり鉢状の巣を作らない種が過半数を占めます。
本種は青白色の地衣類を身にまとい、岩に張り付いて獲物を待ち伏せします。擬態のクオリティがかなり高いので、どこにいるか分からないかもしれません。

正解はこちら(上の写真の赤色線内)。左向きで、左から大きく開かれた顎、頭部、胸部、腹部があります。小さな生き物が頭部の付近を通ると、顎を挟んで捕食します。

以上、4種の昆虫を紹介しました。この中でコミミズクの幼虫は、浜松科学館自然観察園でも観察できることがあります。

私たち人間から見ると、生き物の擬態するクオリティの高さは、芸術の域にあると感じることがあります。しかし、生き物たちは意識的に色形を変化させているわけではありません。捕食者もしくは自らが捕食する相手に見つかりづらい個体は、他の個体よりも子孫をより多く残します。擬態は、進化の結果なのです。

擬態という現象は、「擬態する者」「モデル(真似される者)」「だまされる者」という多様な生き物が係り合うことで生まれた、自然の中の芸術と言えるかもしれません。

擬態をテーマにしたより詳細な情報を科学館noteで公開しています。
興味のある方は是非ご覧ください。
冬が旬!擬態昆虫を探してみよう。(note)

イベント名:「105歩で生き物観察 擬態昆虫編」
開催日::2022年1月16日(日)
イベント名:「擬態昆虫観察会」共催:北杜市オオムラサキセンター
開催日::2022年2月6日(日)
イベント担当者:小粥隆弘(生き物博士)
写真提供:北杜市オオムラサキセンター
参考資料:『だましのテクニックの進化 ―昆虫の擬態の不思議―』 藤原晴彦著(オーム社)