(でんけんラボ)
小中学生を対象に募集し、拡大してみたい対象(試料)をそれぞれ持ってきてもらったのですが、実際に持ち込まれた試料は、昆虫や植物から、お札、宝石、抜けた乳歯まで、まさに千差万別。私も驚きの連続で、とても刺激的な時間を過ごしました。
「いつも見ているものの表面は拡大するとどんな感じ?」
「どうしてこんな動きが出来るのかな?」
「あれとこれを比べてみたいな」
子供たちの、そんなモチベーションを大切に、一組一組じっくりと観察をすすめていきました。
このブログでは、全26名の参加者のうち、特に優れた観察と考察で優秀賞を受賞した3名をピックアップし、デジタルカメラや電子顕微鏡で撮影した写真と、子供たちが観察を通して感じたこと、分かったこと、考えたことをご紹介します。電子顕微鏡を用いた研究の権威である、浜松医科大学の針山先生の講評とともにお楽しみください。
発見!蟻の成虫と幼虫の違いと同じところ
試料:『蟻の成虫と幼虫』
◆ 気づいたこと
幼虫の触覚は短く、成虫は長く曲がっている。どうやって曲がっていくの? 成虫の方が沢山毛がある。人と同じで、毛で体を守っているの? 息を口でしているのではなく、体、尻、節の部分にある穴で息をしている。それは、幼虫にもあって、幼虫もちゃんと息をしている証拠。息を沢山しないと苦しくなるから、穴が沢山あるの? 不思議な液をつけたから爆発しないで観察ができると聞いたので、液のパワーはすごく強い。
◆ 針山先生のコメント
「気づいたこと」の文章が、詩のようでとても素敵に感じました。実験して観察した力もすごいです。虫が好きですか?虫の呼吸のことも考えられるってすごいことだと思います。呼吸をしていないと、体の中に空気(酸素)が届かなくなってしまいますね。そしたら、体を作っている一つ一つの細胞も生きていられなくなってしまいますね。生物を取り巻く環境も、生物そのものも、とても大事なものですね。これからもいろいろと観察してください。
いろんな符節を調べよう!
試料:『符節(コクワガタ、アリ、ナナホシテントウ、カベアナタカラダニ)』
◆ 気づいたこと
ガラスを登れる虫と登れない虫の違いが気になり符節を比べました。登れないコクワガタはほとんど毛が生えていませんでした。登れる虫はどれも毛が生えていたけど、毛の長さや量や形がそれぞれ違ったので、登る仕組みが違うのかと思って調べたところ、アリは爪でひっかけて登り、ナナホシテントウは毛先が平らな吸着毛で吸盤のようにくっつけて登り、カベアナタカラダニはヤモリと同じファンデルワールス力で登ることがわかりました。
◆ 針山先生のコメント
とっても面白い研究ですね。研究計画と実験に加えて、科学的センスがすばらしいことを感じました。「わかってしまう」ことも大事ですが、「考え続ける」こともそれ以上に科学をするときには大事です。たくさん実験して、発見することを楽しんでください。ガラスを登れる登れないというのは、棲んでいる場所と関係するのかな?体重と関係するのかな?脚先の構造は何と関係するんだろう。進化の長い歴史の中で、どうして多様な脚ができたのか???
身近な物をよく見たら
試料:『豆電球』
◆ 気づいたこと
僕は電気がどういう仕組みになっているのか調べるのが好きです。でもすごく近付いて見た事がなかったので見たくなりました。近づくと真ん中のネジネジしているフィラメントという部分の細かなつくりが見えました。細く長く続く溝が見えます。僕の予想は熱を逃す溝か、作る時に自然とできてしまうかの2つです。色んな人に聞いてみたけどはっきりは分かりませんでした。でも理由はあるし、全部の電球にあるのか知りたいです。
◆ 針山先生のコメント
電気って面白いですね。フィラメントに着目して細い溝を発見し、すばらしいです。フィラメントは何故ネジネジしているのですか?明るくなるのはなぜかな?豆電球はそれほどでもないけど外側のガラスを触ると熱いよね。熱くなると物体は膨張するけど、フィラメントも膨張するのかな?新品の豆電球や、使いすぎて切れてしまった電球のフィラメントはどうなっているのかな?大きな電球のフィラメントも溝があるのかな?今後の研究が楽しみです!
3名とも素晴らしい着眼点と考察でしたね。
様々な倍率で観察することによって見方を変えると、身近な日用品や生き物にも、これまで気づかなかった新たな発見があるかもしれません。
科学館公式noteでは、掲載許可をいただいた他の22名の観察・考察も紹介しています。
ぜひ、ご覧ください。
note記事はこちら
付記:関連イベント
・展示会「超拡大ラボ写真コンテスト」
6月5日(土)~27日(日)に「超拡大ラボ写真コンテスト」と題して本記事と同様の内容の展示会を開催し、多くの来館者に子供たちの研究成果をご覧いただきました。
・トークオブワンダー「これは何の拡大写真?」
展示会期間中の6月19日(土)、20日(日)には「トークオブワンダー これは何の拡大写真?」を開催し、19日のイベント終了後、ご後援いただいた浜松ロータリークラブ、浜松東ロータリークラブによる表彰式も執り行われました。
共催:浜松ロータリークラブ、浜松東ロータリークラブ
協力:針山孝彦 氏(浜松医科大学)
開催日::2021年4月1日(木)~25日(日)
イベント担当者:小粥隆弘(生き物博士)
参考サイト等:木の葉化石園ウェブページ
http://www.konohaisi.jp/index.html